免疫学:SARS-CoV-2新規変異株の中和を誘導したファイザー製ワクチン
Nature
2021年6月10日
ファイザー・ビオンテック社製の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)ワクチンで誘導された血清が、SARS-CoV-2の新規変異株を中和したことを報告する論文が、Nature に掲載される。このワクチンを2回接種された者の血清が、インドで最初に確認された変異株B.1.617.2(デルタ株)の他にも(ナイジェリアで最初に確認された)B.1.525を含む他の数種類の変異株を中和することが実証されたのだ。
SARS-CoV-2の新規変異株が次々と出現しているため、これらの変異株を中和する抗体を産生する既存のワクチンの免疫付与能力を評価することが重要になっている。世界保健機関(WHO)は、B.1.617.2系統を「懸念される変異株(VOC)」に指定し、B.1.525を「注目すべき変異株(VOI)」に指定した。
今回、Pei-Yong Shiたちの研究チームは、ファイザー・ビオンテック社製ワクチンを2回接種された者(15人)から20点の血清検体を採取し、B.1.617.2、B.1.617.1、B.1.618(インドで最初に確認された変異株)とB.1.525のそれぞれに由来するスパイクタンパク質を発現する組換えSARS-CoV-2に対する中和活性を調べた。これらの変異株(特にB.1.617.1)に対する中和活性は、2020年1月に分離されたウイルス株に対する中和活性よりも低いことが明らかになったが、検査対象の全ての変異株のロバストな中和が観察された。この新知見は、ファイザー・ビオンテック社製ワクチンによって、これらの新規変異株に対する十分な防御免疫が得られる可能性が高いことを示している、とShiたちは推測している。Shiたちは、こうした結果を南アフリカで最初に確認された変異株B.1.351(ベータ株)に対するワクチンの試験結果と比較した。B.1.351に対する血清の中和活性は、B.1.617.1について観察された場合のように低下することが観察されたが、それでも、このワクチンは、記録されている感染症例に対する有効性が75%で、B.1.351を原因とする重症化症例や致死的症例に対する有効性が100%だった。
今回の論文で報告された変異株に対するワクチンの有効性は、ワクチン接種プログラムが価値あることを実証しており、これによって新規変異体の出現を減らせる可能性がある、とShiたちは結論付けている。
doi:10.1038/s41586-021-03693-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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