気候変動:クリーン燃料で気候温暖化に対する航空の影響を低減できるかもしれない
Communications Earth & Environment
2021年6月18日
持続可能なブレンド燃料を用いると、飛行機雲(航跡雲)の発生が抑えられ、気候温暖化に対する航空の影響が低減する可能性があるという結論を示した論文が、Communications Earth & Environment に掲載される。この知見は、持続可能なブレンド燃料を燃焼する航空機が生成する飛行機雲のすす粒子と氷粒子の含有は従来の燃料の場合より50~70%少ない可能性があることを示唆している。
航空機の飛行機雲は、地球の表面からの赤外線放射を大気中に閉じ込めることで気候温暖化の一因になっている。飛行機雲の気候温暖化に対する寄与度は、航空機からの二酸化炭素と一酸化窒素の排出よりも高いと考えられている。航空機エンジンで燃料化合物の不完全燃焼があると、大量のすす粒子が発生し、このすす粒子上に水蒸気が凝縮し、最終的には凍結して氷粒子となり、飛行機雲を形成する。これは、既知のすすの前駆物質である芳香族化合物を含む従来の燃料で特に起こりやすい。
今回、Christiane Voigtたちの研究チームは、従来の航空機燃料、芳香族化合物の少ない持続可能な燃料を含む5種類のブレンド燃料を用いて、それぞれの場合にエアバスA320型機の後方に生成される飛行機雲のすすと氷の結晶を測定した。Voigtたちは、航空機が持続可能なブレンド燃料を燃焼させているときに生成された飛行機雲はすすが少なく、氷の結晶は大きくなるが数は少なくなり、大気の温暖化効果が小さくなることを明らかにした。
同じくCommunications Earth & Environment に掲載される別の論文では、Bernd Kärcherたちの研究チームが数理シミュレーションを用いて、以前に発見された気候寒冷化効果(航空機によって生成されたすす粒子が別の航空機によって形成された雲と相互作用して太陽光を宇宙空間に向かって反射する効果)の規模が、これまで考えられていたよりも小さいことを示している。まとめると、これらの2つの研究は、芳香族化合物の少ない燃料が普及すれば、全体的な温暖化効果が抑えられて、航空が気候に及ぼす影響を低減するために役立つことを示唆している。
doi:10.1038/s43247-021-00174-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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