健康:2014年のFIFAワールドカップの開催期間中にドイツで心臓発作の発生件数が増加した
Scientific Reports
2021年6月18日
2014年のFIFA(国際サッカー連盟)ワールドカップの開催期間(6月12日~7月13日)に、ドイツ国内で心臓発作による入院患者数が、その前後の年(2013年と2015年)の同じ期間より多かったことを報告する論文が、Scientific Reports に掲載される。なお、ワールドカップの開催期間中の心臓発作による院内死亡率は、ドイツ対アルゼンチンの決勝戦の日だけ上昇していた。
今回、Karsten Kellerたちの研究チームは、ワールドカップの開催された2014年6月12日~7月13日の期間と、大規模なサッカー大会がなかった3つの期間(2013年6月12日~7月13日、2015年6月12日~7月13日、2014年7月14日~8月14日)の計4つの期間について、心臓発作(心筋梗塞;MI)による入院患者数と院内死亡率を比較した。2011~2015年の6~7月のMIによる入院患者の総数に差は認められなかったが、MIによる年間入院患者数は2014年が最も多かった。
Kellerたちは、2014年ワールドカップの開催期間中、ドイツでのMIによる入院患者数が1万8479人だったことを見いだした。これは、2015年の同じ31日間(1万7794人)よりも3.7%、2013年の同じ31日間(1万8089人)よりも2.1%、2014年7月14日~8月14日の期間(1万7482人)よりも5.4%多かった。これら4つの期間において、院内死亡率や患者背景(心血管系リスク因子、合併症など)に差は認められなかった。
また、ドイツ代表チームの試合が入院患者数や院内死亡率に影響したとは認められなかったが、2014年ワールドカップの開催期間中に院内死亡率が最も高かったのは、ドイツが延長戦の末に1対0で勝利したドイツ対アルゼンチンの決勝戦の日だった。なおKellerたちは、ワールドカップ開催期間中のドイツ代表チームの試合の日とそれ以外の日との間で、MIの治療の種類や治療頻度に差がないことを明らかにしている。
今回の知見は、ワールドカップのような人気の高い大規模スポーツイベントによる精神的ストレスの高まりが、心血管イベントの発生に影響する可能性を示唆しているかもしれない。Kellerたちは、今回の研究を用いて、ストレスが増大する可能性がある時期に病院の収容能力を計画する方法に関する有益な情報が得られる可能性があるという考えを示している。
doi:10.1038/s41598-021-90582-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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