惑星科学:金星の雲の水分活性は生命を維持するためには低過ぎる
Nature Astronomy
2021年6月29日
金星をはじめとする太陽系内のほとんどの惑星の、雲内部の水の相対的な利用可能性は、地球上の極端な環境での生存に適応した生命を維持するには低過ぎることを示唆する論文が、Nature Astronomy に掲載される。この知見は、雲の多いほとんどの惑星環境は、私たちが知っているような生命の生存に適さないことを示している。
水分活性は0~1の尺度で表したもので、惑星大気の相対湿度、つまり水の利用可能性に相当する。環境中の水分活性は、極端な環境で生存できる生物(極限環境生物など)に大きな影響を及ぼす可能性がある。実験室での研究から、生命が代謝や繁殖を行うためには、少なくとも0.585の水分活性が必要であることが明らかになっている。
今回、John Hallsworthたちの研究チームは、太陽系の金星や他の惑星の雲内部での水分活性に起因する生命の限界を計算した。その結果、金星の雲の水分活性は、硫酸の液滴によって0.004以下(生命の限界の100分の1未満)に低下することが分かった。一方、火星の雲の典型的な水分活性は0.537で、これは生命の生存可能範囲をわずかに下回り、地球大気の2番目の層である成層圏の水分活性とほぼ同じであった。しかし、地球大気の最下層である対流圏は、生命にとって許容できるものである。木星の大気は、–10~+40℃の温度で0.585以上の生物学的に許容可能な水分活性であるが、雲の組成などの要因が生命の生存可能性を制限する可能性がある。
Hallsworthたちは、今回の研究で用いた手法が、太陽系外惑星の大気中の水分活性を決定するためにも使用でき、地球外生命探査を絞り込むことができると結論付けている。
doi:10.1038/s41550-021-01391-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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