経済学:EU離脱後の新たな貿易協定が英国の健康的な食事に悪影響を及ぼす恐れ
Nature Food
2021年6月29日
英国の欧州連合(EU)離脱に関連した交渉によって締結される貿易協定が、英国の健康的な食事を損なう可能性があることを示唆する論文が、Nature Food に掲載される。しかし、こうしたリスクは、補助金改革、栄養政策、健康的な食事を推奨する貿易協定によって軽減できる可能性がある。
英国で消費される食品のほぼ半分(果物と野菜の4分の3以上)は輸入されたものであるため、英国の食料システムは、英国と他の貿易相手国との間で現在行われている貿易交渉の影響を大きく受けることになる。貿易協定の内容によっては、栄養価の高い食料が入手しやすくなり、食料供給の多様性が高まることがある一方で、高カロリーで栄養価が低く、加工度の高い不健康な食品の輸入と国内生産が不均衡に増加する可能性もある。このことは、がんや冠動脈性心疾患など、食事に関連した健康問題にとって重要な意味を持つ可能性がある。
今回のMarco SpringmannとFlorian Freundは、統合型健康–経済モデル化の手法を用いて、英国の健康的な食事が貿易協定の種類によってどのような影響を受けるかを予測した。米国と英連邦諸国との間の自由貿易協定は、高エネルギー食品の流通量の増加を通じて英国のEU離脱が健康に及ぼす悪影響を3倍増加させ、肥満関連リスクの増大につながる可能性がある。英国のEU離脱の結果、健康を増進させる食品と輸入に依存する食品(果物や野菜など)の価格が上昇し、そのために消費量が減少し、その結果、食事に関連した死亡率が上昇する可能性がある。これに対しては、園芸食品の輸入関税を撤廃し、英国国内の果物、野菜、豆類、ナッツ類の生産者を支援するための農業補助金の改革を行うことで、こうした悪影響を緩和できる可能性がある。
今回の知見は、貿易交渉が続いている現在の重要な時期に、英国が栄養に配慮した貿易政策を立案し、補助金改革を展開して、より健康的な食事を実現する重要な機会をもたらしている。
doi:10.1038/s43016-021-00306-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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