天文学:星を放り出すブラックホール
Nature Astronomy
2021年7月6日
球状星団「パロマー5」は、10億年後には、星が放り出された数十個のブラックホールの集合体になることを示唆する論文が、今週Nature Astronomy 報告される。今回の発見は、パロマー5の進化についての理解だけでなく、銀河系内の他の星団の運命にも影響するものである。
パロマー5には、2つの特徴がある。1つは、銀河系ハローと呼ばれる銀河系を取り囲む古い星の集合体の中で最もまばらな星団の1つであるということ、もう1つは、星団から放り出された星で構成された流れる2本の長い「尾」を持っていることである。この尾は、天球の20度以上にわたって広がっているため、パロマー5は尾の形成に関する理解を深める上で重要な星団である。
今回Mark Gielesたちは、パロマー5の進化を調べるために、星ごとのシミュレーションを行った。その結果、その構造および特徴的な尾という2つの際立った特徴が、現在の星団の質量のおよそ20%を占める恒星質量ブラックホールの集団の産物かもしれないことが分かった。今回のシナリオでは、パロマー5のブラックホールの質量の割合は、時間の経過とともに星がブラックホールよりも速く失われる臨界閾値を超えた。その後、星団は膨張し、尾の形成が促進された。10億年後には、現在のブラックホールの集合体の重力的な影響により、星団内の星が全て放り出され、ブラックホールだけが残ることになる。
もともと高密度の星団がさらにコンパクトになり、ブラックホールの割合が減少して観測可能な尾がなくなることから、パロマー5のようなブラックホールを多く含む広がった星団は、最近検出された、関連する星団を持たない、星でできた細いストリームの前駆天体の可能性があると著者たちは結論付けている。
doi:10.1038/s41550-021-01392-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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