物理学:素粒子物理学の普遍的真理を裏付けるATLAS実験の測定結果
Nature Physics
2021年7月6日
大型ハドロン衝突型加速器(LHC)のATLAS検出器が捉えた、素粒子物理学の標準模型の基本原理であるレプトンフレーバー普遍性についての測定結果を報告する論文が、Nature Physics に掲載される。この知見は、大型電子陽電子衝突型加速器で得られたそれまでの結果に取って代わるものである。
宇宙の構成要素である素粒子と、素粒子間に働く電磁気力、弱い力、強い力という基本的な力に関する我々の理解は、素粒子物理学の標準模型で定式化されている。レプトンは素粒子の一種で、電子、ミューオン、タウ粒子は3種類(フレーバー)の荷電レプトンである。標準模型では、WボソンやZボソンと呼ばれる弱い力を媒介する粒子(電弱ゲージボソン)とレプトンの結合は、レプトンのフレーバーとは無関係に生じると仮定されており、これは「レプトンフレーバー普遍性」と呼ばれている。
今回ATLAS Collaborationは、この「普遍的真理」がミューオンおよびタウ粒子とWボソンの結合にも当てはまるかどうか調べた。大型ハドロン衝突型加速器において、陽子–陽子衝突で生成されたトップクォークの崩壊からWボソンのきれいなサンプルが得られ、LHCのATLAS検出器で記録された。著者たちは、タウ粒子とミューオンへのWボソンの崩壊率の比を測定することによって、弱い力は両方の種類のレプトンと同じように相互作用すると結論付けることができた。
ATLAS Collaborationによって得られたこの結果は、LHCによるそうした測定の最初のものであり、LHCの前身である大型電子陽電子衝突型加速器の実験で得られた精度を上回っており、これまでで最も正確なものである。
doi:10.1038/s41567-021-01236-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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