医学研究:性別やジェンダーを分析変数としないCOVID-19臨床試験が多い
Nature Communications
2021年7月7日
米国の臨床試験登録サイトであるClinicalTrials.govに登録されている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療法を調べる臨床試験のうち、性別かジェンダー、もしくはその両方を分析変数として組み込む計画を明示的に報告したものは4%にすぎないことが明らかになった。この知見を報告する論文が、Nature Communications に掲載される。
性差とジェンダー上の差は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の新規感染者数とCOVID-19による死者数に影響を及ぼす。性別を変数として組み込むことは、有効な介入法の発見に役立ち、COVID-19の病理に関する知見をもたらす可能性がある。ジェンダー(アイデンティティー、規範、個人間の関係を記述する、社会的に構築された変数)は、検査、診断、医療と治療の受けやすさに影響を及ぼすことがあり、社会的支援、経済的支援、後方支援の利用可能性にも影響を及ぼす。臨床試験の結果を報告する際に性差を除外すると、除外された性に対する副作用のリスクが増大する可能性があり、ジェンダーを変数として取り扱わなければ、医療の不平等に取り組む機会が失われる。
今回、Sabine Oertelt-Prigioneたちの研究チームは、2020年1月1日~2021年1月26日にClinicalTrials.govに登録されたCOVID-19の臨床試験における性別とジェンダーの組み込みについて分析した。その結果、性別を一致させた試料もしくは代表試料、性別および/またはジェンダーを強調した結果の報告を計画していた研究が237件、性別および/またはジェンダーを分析変数として組み込むことを計画していた研究が178件、特定された。しかし、登録された4420件の臨床試験の過半数(2496件)は、試験登録時に性別やジェンダーに言及しておらず、935件では、参加者募集の文脈で性別やジェンダーに言及するのみだった。さらにCOVID-19に対する薬理学的介入に関する無作為化対照試験の結果を報告する論文45編のうち、性別ごとに細分類した試験結果、あるいはサブグループ解析の結果を報告したのは8編だけだった。
Oertelt-Prigioneたちは、以上の知見がClinicalTrials.govだけを検討して得られたものであり、このことが、今回の知見を世界的に適用できるかどうかに影響を及ぼす可能性があると注意を促している。また、Oertelt-Prigioneたちは、臨床試験における性別またはジェンダーの組み込みが、標本サイズや各専門分野の風土の影響を受けている可能性があり、研究者が臨床試験を登録する際に性別および/またはジェンダーの解析に関する十分な情報を提供していない可能性もあると述べている。一方で、Oertelt-Prigioneたちは、COVID-19やSARS-CoV-2の研究に取り組む全研究者が性別に応じた方法を実施すべきであり、より包括的な分析を実施する際には、ジェンダーが関係している影響に取り組み、特定のサブグループの経験を調べて、検査などの利用を阻害する要因を明らかにすべきだと主張している。
doi:10.1038/s41467-021-24265-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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