地球科学: 海水準変動がサントリーニ火山活動に影響を及ぼす
Nature Geoscience
2021年8月3日
全球の海水準が低かった期間は、過去36万年間にわたって、ギリシャのサントリーニ火山の噴火のタイミングに影響を及ぼしたことを明らかにした論文が、Nature Geoscience に掲載される。
噴火する火山にマグマを供給するマグマだまりの挙動は、さまざまな要素の中でも、上部にある物質からの下向きの圧力の影響を受ける。堆積物を除去したり付加したりする浸食過程やテクトニック過程は、噴火活動を長期間にわたって変化させる可能性がある。また、数千年の時間スケールでは、海洋や氷河内の水表面の水の変動は、マグマだまりに影響を及ぼすのに十分な質量の変位をもたらす可能性がある。しかしながら、このような変化(これらは全球の気象条件と結び付けられることが多い)が火山噴火のタイミングや規模に及ぼす重要性はよく分かっていない。
今回、Chris Satowたちは、サントリーニ火山のおよそ36万年間の噴火年代記録と、過去4回の氷河期サイクルにわたる高分解能の全球海水準記録を比較した。サントリーニ火山近傍の海洋堆積物に保存されているテフラ(軽石や灰)層に関するこれまでの研究からは、激しい爆発的なものからより噴出的なものまで、過去の211回の噴火の時間分解アーカイブが得られている。Satowたちは、これらの噴火のうちの208回は、海水準が現在のレベルよりも少なくとも40メートル低くなった後に起きていたことを見いだした。このような海水準変動は、陸上の大規模な氷床が拡張したり縮小したりすることで定期的に起きる現象である。数値モデルから、この海水準のしきい値を越えると、サントリーニ火山のマグマだまり頂部で地殻を破砕するのに十分な伸長応力が生成され、マグマが岩脈を通って上部へと伝播できるようになることが明らかになった。このような岩脈のいくつかが地表に到達すると噴火が起きる。
Satowたちは、最終氷期以降に海水準が上昇し、現在も地球温暖化によって上昇していることから、サントリーニ火山で近年起きた比較的小規模な噴火は止まる可能性があるが、大規模な爆発的噴火の恐れは残っていると結論している。またSatowたちは、世界中の火山災害を評価する際には、過去の海水準変動を考慮する必要があることを強調している。
doi:10.1038/s41561-021-00783-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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