遺伝学:閉経時期に関連する遺伝的バリアント
Nature
2021年8月5日
大規模なゲノムワイド関連解析が実施され、閉経年齢に関連する290個の遺伝的バリアントが特定されたことを報告する論文が、Nature に掲載される。今回の研究で、生殖寿命を制御する生物学的機構に関する知識が得られた。この知識は、新たな不妊治療法の発見や疾患の予防を目的とした今後の研究に役立つ可能性がある。
平均すると、大部分の女性が50~52歳の間に閉経を経験する。閉経が近づくにつれて、女性の自然生殖能力は低下し、骨折や2型糖尿病などの疾患のリスクが高まる。なぜこのようなことが起こるのか、そして生殖能力を維持するための治療法の開発については、あまり知見が蓄積されていない。
今回、John Perryたちは、40~60歳で自然閉経を迎えたヨーロッパ系女性20万1323人の遺伝的データを解析した。約1310万の遺伝的バリアントが検討された結果、卵巣の加齢性変化の決定因子が290個特定され、これらが閉経の遅れに関連することが分かった。また、さまざまなDNA損傷応答遺伝子が、自然閉経年齢に関連し、女性の一生にわたって作用して、卵巣機能を制御していることも判明した。マウスにおいて、これらの遺伝子のうちの2つ(Chek1とChek2)を特異的に操作すると、生殖能力と生殖寿命が影響を受けることが分かった。さらにヒトでの遺伝的解析から、閉経の遅れが、骨の健康状態の改善と2型糖尿病の発症確率の低下とそれぞれ因果関係のあることが示唆された。その一方で、閉経の遅れは、ホルモン感受性がんのリスク上昇とも関連していた。
生殖年齢の期間に影響を及ぼす数多くの因子(非遺伝的因子を含む)については解明が進んでいないが、Perryたちは、今回の研究で得られた知見が、女性の生殖機能を高めたり、生殖能力を維持したりするための新しい治療法に関する将来の実験的研究にとって有益な情報となることを期待している。
doi:10.1038/s41586-021-03779-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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