食物:気候変動は植物病原体が作物に及ぼすリスクを増加させる
Nature Climate Change
2021年8月6日
気候変動は、高緯度地域での作物収量の増加につながる可能性があるが、この増収分が、病原体による作物感染のリスク増加によって相殺される可能性があると考えられることを報告する論文が、Nature Climate Change に掲載される。
世界の人口が増加し、耕作可能地が減少し、気候変動の脅威が増大する中、食料安全保障が絶えず懸念事項となっている。気候変動によって世界の作物生産量が減少するという事態は、例えば干ばつの結果として直接的に生じるものと植物病原体の影響を介して間接的に生じるものがある。植物病原体は、作物生産にとっての大きな脅威だが、気候変動が植物病原体の分布と存在量にどのように影響するのかについてはほとんど解明されていない。
今回、Daniel Bebberたちは、21世紀末までの将来的な気候シナリオの下で、主要な商用作物(トウモロコシ、コムギ、ダイズ、イネの4種)と温帯作物と熱帯作物(計8種)の生産量をモデル化した。その結果、全体として、これらの作物の大部分は、北米とユーラシアの一部などの高緯度地域で収量が増加すると予測された。一方で、高緯度地域では、植物病原体の菌類と(菌類様)卵菌類(計80種)による温度依存性感染リスクが増加することも示唆された。また、米国、ヨーロッパ、中国などの一部の地域では、病原体群集内の種構成がさらに大きく変化する可能性がある。
Bebberたちは、病原体の量が増える可能性があるということは、食料安全保障に対するリスクが大きいことを明確に示しており、慎重な作物管理が必要なことを裏付けるものだと結論付けている。
doi:10.1038/s41558-021-01104-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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