科学コミュニティー:生態学・進化学・保全生物学界の人種差別主義と闘う
Nature Ecology & Evolution
2021年8月10日
生態学・進化学・保全生物学(EECB)分野のための反人種差別主義的介入のツールキットについて紹介するPerspectiveが、今週、Nature Ecology & Evolution に掲載される。エビデンスに基づくこうした活動は、教室内、研究グループ内、そして学科レベルでの構造的障壁の打破を促進するためのものである。
STEM(科学・技術・工学・数学)分野には今なお人種的・民族的な不公平が広く残っていて、とりわけEECB分野ではそれが顕著であり、これは、#BlackintheIvoryや#BlackBirdersWeekなどの最近のソーシャルメディア運動にも表れている。こうした不公平は、学生から上級の教職員まで、全ての階層の研究者に影響を与える。不公平には金銭的障壁と社会的障壁があり、公然の偏りもあれば隠れた偏りもある。そのため、EECBの各分野は、こうした構造的問題を突き止め、それらに取り組んで改めるために、確固たる反人種差別主義的介入を開始する必要がある。
Melissa Croninたちはまず、種の命名に対する人種差別主義的影響、進化生物学界の人種差別主義的イデオロギー、保全における植民地主義的慣行など、EECB分野における人種差別主義の歴史に向き合った。その上で、Croninたちは3つのレベルで考えられる介入を示している。教室内に関しては、授業の進め方やカリキュラムの内容において求められる改革を特定しており、例えば、シラバスに反人種差別主義的な内容を盛り込むことなどを提案している。研究グループ内に関しては、職場の風土を改めることによって、過小評価(underrepresented)グループ出身の研究者が確実に採用され、その雇用を維持する方法が論じられている。
提案には、BIPOC(黒人、先住民、有色人種)を優先的に採用することや、フィールドワークの脱植民地主義化が含まれている。Croninたちはまた、学科内に関して、インクルーシブな風土の醸成法や、雇用、昇進、終身在職権、雇用継続の過程において反人種差別主義的戦略の重視を徹底する方法を明らかにしている。Croninたちは、これは、例えば人種差別主義と闘うための学科内の組織を作ったり、非主流人種グループ出身の科学者が行った研究が注目されるよう徹底したりすることによって可能になるのではないかと示唆している。
Croninたちは、多様なバックグラウンドの参加者が、公平性を十分かつ継続的に経験できるようにするためには、EECBの各分野における大改革が必要だと結論付けている。今回のPerspectiveで示された提案は、こうした問題に取り組むための建設的なモデルである。
doi:10.1038/s41559-021-01522-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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