免疫学:成人と小児ではSARS-CoV-2に対する免疫応答に差がある
Nature Communications
2021年7月29日
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に感染した小児と成人の免疫応答の差異を詳しく記述した論文が、Nature Communications に掲載される。今回の研究で、小児が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を発症した場合に、成人より軽症になる理由を示す証拠が得られた。
SARS-CoV-2に対して特異的に作用する抗体が体内に存在しなかったため、世界で急速な感染拡大が起こった。SARS-CoV-2感染症を防御する重要な役割を担うのが中和抗体だが、この感染症に対する防御にとっては、協調的な細胞性免疫応答も重要なことが実証されている。小児のSARS-CoV-2感染症は、成人の場合よりも軽症ですむことが多いが、その背後にある免疫応答については解明されていない。
今回、Sophie Valkenburgたちは、香港でのSARS-CoV-2感染症例(小児24例と成人45例)について、感染後の免疫応答を6か月間にわたって評価し、対照群(検査結果が陰性の成人)と比較した。感染症例において、小児のSARS-CoV-2に対するT細胞応答が、成人の場合より弱いという観察結果が得られた。また、他のベータコロナウイルス(普通感冒の原因となるウイルスなど)に対する抗体のレベルは、小児の方が成人より低かった。これは、小児と成人で免疫応答のベースラインのレベルが異なることを示している。Valkenburgたちは、COVID-19の小児患者の症状が成人患者より軽いのは、ベータコロナウイルスに対する免疫を獲得していないこととT細胞の活性化レベルが低いことが原因となっている可能性があると考えている。
COVID-19に対するT細胞の防御的役割を理解するためにはさらなる研究が必要だが、Valkenburgたちは、今回の研究で得られた知見が、成人と小児で異なる免疫応答の理解に役立つ可能性があると結論付けている。
doi:10.1038/s41467-021-24938-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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