がん治療:転移性肺がんでの併用免疫療法の評価
Nature Medicine
2021年8月13日
腫瘍浸潤リンパ球を使う養子細胞療法と免疫チェックポイント阻害という2種類の免疫療法を併用すると、転移性肺がん患者で抗腫瘍応答が誘発されることが報告された。20人の参加者で行われたこの概念実証実験のデータは、進行肺がん患者に対する新しい治療法につながるかもしれない。
免疫チェックポイント阻害は免疫療法の一種で、免疫系の調節タンパク質を阻害する薬剤を投与するのだが、がん患者の一部にしか臨床応答が生じない。最近、がんの治療、特に乳がんや皮膚がんの黒色腫の治療法として、自己の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を使う方法に関心が高まってきている。この方法では、患者の腫瘍から「T細胞」と呼ばれる免疫細胞を取り出し、これを実験室で腫瘍細胞と一緒に培養して、がん細胞に対する反応性を示すT細胞を増やしてから、患者の体内に戻す。
B Creelanたちは、ニボルマブという薬を使った免疫チェックポイント阻害療法とTILとの組み合わせが転移性肺がんの治療にどのように役立つかを、20人の患者コホートで第1相臨床試験を行って調べた。治療を行ってから数週間以内に、複数の患者で臨床活性の兆候が見られるようになり、2人の患者では腫瘍が寛解した。TILの分子解析や腫瘍生検検体の塩基配列解読が行われ、ほとんどの患者で観察された治療応答は、腫瘍細胞が発現する抗原のTILによる認識と関連していることが確かめられた。一部の症例では、このような抗原に特異性を示すTILは、その抗腫瘍活性を1年以上も維持していた。TILとニボルマブの併用は、今後が期待できる有効性を示しただけでなく、副作用はあるが対処が可能で、安全であると見なされた。
このパイロット試験は少数の患者を対象に行われたものだが、この併用療法は進行した転移性肺がんの新たな治療戦略になるだろうと、著者たちは考えている。
doi:10.1038/s41591-021-01462-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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