がん:肺がんを発症した非喫煙者に特異的な遺伝的シグネチャーが見つかる
Nature Genetics
2021年9月7日
肺がんを発症した喫煙者と非喫煙者では、肺がんの基盤をなす変異パターンが異なっていることが明らかになった。この知見は、タイプの異なる肺がんに対して治療の道を開くだけでなく、腫瘍形成をもたらす生体プロセスの損傷がゲノムにどのような影響を及ぼすかの情報を提供するものである。
肺がん患者の約10~25%は非喫煙者であるにもかかわらず、これまでの肺がんのゲノム塩基配列解析研究の大部分は、喫煙者の腫瘍を対象としてきた。また副流煙(受動喫煙)は、喫煙と同様の機構によってがんを促進すると考えられることが多いが、この点に関するゲノムレベルの情報はほとんどない。
今回、Maria Teresa Landiたちは、喫煙歴のない肺がん患者232人(診断時の平均年齢は64.8歳、75.4%が女性)の腫瘍のゲノム塩基配列を解読して、非喫煙者のがんに特異的な遺伝的パターンを明らかにした。これらの腫瘍は、ゲノム変化に基づいて3つの大きなカテゴリー(サブタイプ)に分類できた。その中には、急速に腫瘍形成が起きるものもあれば、非常にゆっくりのものもあった。サブタイプの指標としては、変異負荷の低さ、腫瘍内不均一性の高さ、特異的な染色体変化、EGFR遺伝子の高頻度変異、全ゲノム重複などがある。非喫煙者の肺がん患者におけるこの3つのサブタイプの頻度は、喫煙者での頻度とは異なるので、今回の知見は精密医療にとって有益な情報となる可能性がある。Landiたちはまた、非喫煙者の肺がん患者には、明確な喫煙関連変異パターンは見られず、そのことは副流煙にさらされた人においても同様であることを明らかにした。
以上の研究結果をより詳細に明らかにしていくためには、大規模な患者コホートでのさらなる再現解析が必要になるが、今回の研究で得られた知見は、非喫煙者の肺がんの個別化治療を一歩前進させるものだとLandiたちは述べている。
doi:10.1038/s41588-021-00920-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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