社会学:アジアではCOVID-19に対する意識が野生生物産品の需要を抑制している
Nature Ecology & Evolution
2021年9月7日
アジアの一部の地域において、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)に対する意識が高いと自己申告した人は、将来において野生生物産品を消費する可能性が最大24%低いと考えられることが、5000人を対象とした調査で明らかになった。この成果について報告する論文が、?Nature Ecology & Evolution に掲載される。こうした知見は、疾病、とりわけ野生生物の消費に関連する病気のリスクに関する情報を伝えることが、感染症の沈静化と生物多様性の保全という2つの利点を持つ可能性があることを示唆している。
野生生物とその産品は世界各地で伝統的・文化的用途で消費されており、これが生物多様性を脅かしたり、野生生物からヒトへ病原体を流出させたりする場合がある。そのため、保全コミュニティーは、そうした産品の需要を抑制することに関心がある。
今回、Robin Naidooたちは、COVID-19パンデミック初期の2020年3月に、ある調査を実施した。調査の対象は、香港、日本、ミャンマー、タイ、ベトナムの5000人(平均年齢39歳、53%が男性)で、調査参加者には、自分や家族、知人が、過去1年間に野生生物を消費したかどうか、今回のパンデミックでその消費傾向が変化したかどうか、将来において生鮮市場で野生生物を購入する可能性がどの程度あるかを尋ねた。Naidooたちは、そうした設問に対する回答が、参加者の自己申告によるCOVID-19への意識や懸念のレベルによって影響されているかどうかを、その他の社会人口学的変数に沿って調べた。COVID-19に対する意識が最も高いカテゴリーの参加者は、野生生物産品を購入する可能性が、国によって11~24%低かった。ある程度意識のある人々でも同様の傾向が見られたが、その例外はベトナム(消費量を増やしている傾向が強かった)とミャンマー(将来の購入の可能性が高いと回答した)であった。
Naidooたちは、野生生物産品の消費に関しては各国間および各国内でさまざまな動機やニーズがあるため、その需要を抑制することは容易でないと指摘する。今回の論文の結果は、野生生物消費の疾病関連リスクに関する一般への啓蒙が保全と公衆衛生の両面で有益である可能性を示唆している。
doi:10.1038/s41559-021-01546-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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