遺伝学:ネコの毛皮の模様が決まる仕組み
Nature Communications
2021年9月8日
イエネコの毛皮の模様(例えば、しま模様のタビー)の形成は、発生中の胚に生じる特定の分子によって決まることを示唆する論文が、Nature Communications に掲載される。今回の知見は、同じ皮膚細胞が異なる遺伝的シグネチャーを獲得して、それが毛色の複雑なパターンを生み出し、ネコやその他数多くの哺乳動物の多様性を決定付ける特徴となる仕組みを解明するための手掛かりになる。
これまでの研究から、イエネコの毛色のパターンは、体毛の成長期に、隣接する毛包からなる毛包群からそれぞれ異なるタイプのメラニン色素が産生されて出現することが明らかになっている。しかし、毛包から産生されるのが黒色メラニンなのか黄色メラニンなのかを決める発生過程は明らかになっていない。
今回、Gregory Barshたちは、異なる発生段階にある生存不能なネコ胚から採取された皮膚試料を調べて、単一細胞レベルでの遺伝子発現解析と組織切片に含まれるタンパク質の解析を行った。これらの解析から、その後の体毛の成長期に出現する毛色パターンの形状は、胚の遺伝子発現の差異によって決まることが明らかになった。Barshたちは、この過程で中心的役割を果たすのが、Dickkopf 4(Dkk 4)遺伝子にコードされるシグナル伝達分子だとする考えを示し、ティックドパターンのネコ(例えば、アビシニアンやサーバリンサバンナ)においてDkk 4遺伝子が変異していることを示した。
今回はイエネコの研究だが、Barshたちは、この研究で得られた知見をヒョウ、トラやその他の哺乳類における毛色パターンの形成にも適用できる可能性があるという考えを示している。
doi:10.1038/s41467-021-25348-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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