気候変動:温暖化の目標(1.5℃上昇)を達成するために必要な化石燃料抽出量の厳しい制限
Nature
2021年9月9日
地球温暖化を1.5℃の上昇に抑えることに成功する確率を50%以上とするには、2050年の石油、化石メタンガス、石炭の埋蔵量が現在の埋蔵量のそれぞれ約60%、約60%、約90%を下回らないことが必要だという結論が、このほど実施されたモデル化研究によって導き出された。この研究について報告する論文が、今週、Nature に掲載される。多くの化石燃料抽出プロジェクト(進行中のものと計画中のものを含む)は、国際的に合意された気候変動対策の目標の達成に役立たない。この目標を達成するには、例えば石油・ガスの生産量を2050年まで毎年3%ずつ削減しなければならないと試算されている。生産者に生産活動の再評価を促すためには、生産量を制限し、需要を減らす政策が必要となる。
全世界で消費されるエネルギーの81%を化石natue燃料が担っている。しかし、2015年のパリ協定に定められた国際的に合意された気候変動対策の目標(産業革命以前と比較して地球温暖化を1.5℃に抑える)を達成するためには、化石燃料の生産と使用を大幅に減少させる必要がある。2015年にNature に掲載された論文では、2050年までに石油埋蔵量の3分の1、ガス埋蔵量の半分、石炭埋蔵量の80%以上を未使用のままにしておくことができれば、地球温暖化を2℃の上昇に抑えることに成功する可能性が十分にあるという推定結果が示されていた。
Dan Welsbyたちは、これまでの研究成果を基にして、地球温暖化を1.5℃に抑制できる可能性を生み出すため、地中に残しておく必要のある化石燃料の割合を評価した。その結果、抽出禁止とする化石燃料の埋蔵量を大幅に増やす必要があり、特に石油の埋蔵量は、2015年の推定結果と比較して、残すべき埋蔵量を25%上乗せしなければならないと推定された。また、Welsbyたちは、2050年までに全世界で石油とガスの生産量を低減しなければならないということは、現在または今後10年間に多くの地域で生産量がピークを打たなければならないことを意味するという見解を示している。さらに、Welsbyたちは、今回の研究で用いたモデルが、将来的な地球システムのフィードバックを考慮しておらず、また、温室効果ガスの排出を打ち消すために必要な技術の展開のペースと規模に不確実な点があるため、今回の推定結果が過小評価である可能性が高いという見解を示している。
doi:10.1038/s41586-021-03821-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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