古生物学:甘いものが好きだった有史以前の霊長類
Scientific Reports
2021年9月10日
先史時代の霊長類Microsyops latidensは、年代測定によって始新世初期(約5400万年前)のものとされているが、今回、M. latidensの歯の化石に哺乳類のう蝕(虫歯)を示す最古の証拠が見つかったことを報告する論文が、Scientific Reports に掲載される。ビッグホーン盆地南部(米国ワイオミング州)で発見された1030点の歯の化石(歯と顎の断片)のうち、77点(7.48%)にう蝕が認められた。その原因は、果物の多い食事やその他の糖分の多い食物である可能性が高いとされる。う蝕の有病率の経年変化は、霊長類の食餌が糖度の高いものと低いものの間で変動したことを示している。
Keegan SeligとMary Silcoxは今回、ビッグホーン盆地南部の堆積層において化石が発見された位置を比較して、化石の年代を測定した。化石の年代測定は、その化石が発見された堆積物の地質年代に基づいて行うことが可能だった。化石標本のうち、最も古いものと最も新しいものは、他の化石標本よりう蝕が少なかった。このことは、霊長類の食餌が糖度の高い食物と低い食物の間で変動していたことを示唆するものとされた。彼らは、始新世初期の気候の変動が、植生の成長と食料の入手可能性に影響を与えた可能性があると主張している。
また、著者たちは、M. latidensの歯の化石におけるう蝕の有病率が、これまでの研究報告による現生霊長類における頻度よりも高いことを明らかにした。う蝕の有病率がM. latidensより高かったのは、オマキザル属(オマキザルなど)とタマリン属(タマリンなど)だけであった。
doi:10.1038/s41598-021-95330-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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