遺伝子組み換えネコ
Nature Methods
2011年9月12日
イエネコの遺伝子組み換えを行う方法を紹介する論文が、Nature Methods(電子版)で発表される。この技術は、神経生物学および疾患モデル作製の研究で重要になると考えられる。
従来、遺伝子組み換えネコは、体細胞核移植(クローンの作製)によって作製されてきた。しかし、その作業はきわめて効率が低く、外見上正常な個体でも細胞および分子のレベルでは異常を持っている場合がある。E Poeschlaたちは今回、通常の不妊手術で得られた卵母細胞をウイルスベクターで改変するネコの遺伝子導入法を発表している。論文では、効率的な遺伝子導入が行われ、導入遺伝子が強力に発現し、健康な仔ネコが3匹生まれて、その組み換えが次世代に伝達されたことが明らかにされている。
さらに研究チームは、この方法をAIDSウイルスの病原性の研究に応用した。一部の動物種は、他種のAIDS原因ウイルスに対する耐性を与える因子を発現する。研究チームは、アカゲザルの抗ウイルス因子を発現する遺伝子組み換えネコを作製し、そのネコの細胞ではネコAIDSウイルスの複製が抑制されていることを予備的に観察した。ただし、生命体全体の感染が未検討であることには注意が必要であるとしている。
これは、肉食動物の配偶子の遺伝子組み換えに関する最初の研究報告である。その大きさ、複雑さ、およびAIDS原因ウイルスに対する感受性のため、ネコは、マウスで行うことができないさまざまな種類の研究に利用することができる。この研究論文で発表される遺伝子導入は、このモデルで可能な実験の幅を広げると考えられ、ネコ、ヒト、双方の疾患を詳細に解明するのに寄与する可能性がある。
doi:10.1038/nmeth.1703
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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