古生物学:先史時代のゾウの足跡と行跡の化石から分かった仔育ての場所
Scientific Reports
2021年9月17日
スペイン南西部のウエルバにあるMatalascañas Trampled Surface(マタラスカーニャのゾウの踏み跡)で発見された行跡(連続した足跡)の化石から、この地域が後期更新世(12万9000~1万1700年前)に、アンティクウスゾウ(Palaeoloxodon antiquus)が新生仔を育てるために使用されていたことが示唆された。この知見を報告する論文が、Scientific Reports に掲載される。
今回、Carlos Neto de Carvalhoたちは、連続した足跡の化石(34セット)を分析した。これらの化石は、足跡が円形か楕円形かという基準やその他の基準により、アンティクウスゾウの行跡化石と同定された。アンティクウスゾウは、現生種のマルミミゾウ(Loxodonta cyclotis)と近縁関係にある。de Carvalhoたちは、アンティクウスゾウ個体の年齢を決定するために、足跡の長さに基づいて肩高と体重を算出した。
今回の研究で、14頭の仔ゾウの足跡が同定され、これらが新生仔と2歳までの仔ゾウの足跡で、体重は70~200キログラムと推定された。また、8頭の幼年期(2~7歳)のゾウと6頭の青年期(8~15歳)のゾウの行跡も同定された。これらの化石において若いゾウの占める割合が大きく、この地域には、かつて砂丘池があり、ゾウの群れの繁殖地になっており、周囲の植生が他の食物源に長距離移動できない若いゾウの食物源になっていたことを示すものだと考えられる。
また、de Carvalhoたちは、若い仔ゾウの行跡のそばにあった成体のゾウの行跡を同定し、これらの行跡が近い位置関係にあったことから3頭の成体の雌ゾウ(15歳超)の行跡である可能性があるとしている。雄ゾウの行跡として同定されたのは、わずか2セットだった。これらの足跡は、他の足跡よりかなり大きく(長さ50センチメートル超)、体重は7トン超と推定された。
de Carvalhoたちは、ウエルバのMatalascañas Trampled Surfaceは、雌ゾウが仔ゾウを育てるための繁殖に適した豊かな生息地であり、雄ゾウが訪れることはまれだったと結論付けている。
doi:10.1038/s41598-021-96754-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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