工学:植物種子から着想したマイクロデバイスが風に乗る
Nature
2021年9月23日
風によって散布される植物の種子から着想した設計に基づいて作製され、環境モニタリングや通信に応用できる可能性がある飛行装置について記述された論文が、Nature に掲載される。この飛行装置は、能動的電子ペイロードを搭載でき、バッテリー不要のワイヤレスデバイスの新たな可能性を樹立した。
植物の種子は、さまざまな形状やサイズのものがあり、一部の植物種子は、風による散布を促進して、遺伝物質を分散させて、種の繁殖を図っている。種子の形状は、大きく4種類に分類され、セイヨウタンポポ(Taraxacum officinale)などのパラシュート型、ハネフクベ(Alsomitra macrocarpa)などのグライダー型、トネリコバノカエデ(Acer negundo)やヒロハカエデ(Acer macrophyllum)などのヘリコプター型、キリ(Paulownia tomentosa)やニワウルシ(Ailanthus altissima)などのフラッタラー型(またはスピナー型)がある。
今回、John Rogersたちは、風によって散布される植物種子から着想を得て、マイクロスケール(1ミリメートル未満)からマクロスケール(1ミリメートル以上)までのサイズの一連の飛行装置を設計した。Rogersたちは、シミュレーションと風洞実験を行って、飛行装置の設計パラメーター(直径、構造、翼型など)が変わると、空力特性がどのような影響を受けるのかを調べた。ヘリコプター型やスピナー型の植物種子に見られるような回旋挙動は、飛行装置の安定性と飛行挙動を高める。この設計には、簡単な電子回路を組み込むことができ、その一例として空中を浮遊する微粒子を検出する回路がある。
同時掲載のNews & Viewsでは、E. Farrell Helblingが「これらのデバイスは、インターネットに接続されたデバイスのネットワーク(『モノのインターネット』)に基づいた環境モニタリング、無線通信ノード、またはその他のさまざまな技術のための動的センサーネットワークを形成できる可能性がある」と述べている。さらに、Helblingは、この飛行装置が風の中でどのように振る舞うかや、他の設計(パラシュート型やグライダー型)による飛行装置がどのような性能を発揮するかを明らかにするには、さらなる研究が必要だと付言し、その一方で、今回の研究が飛行装置の能力を高める道を開くと示唆している。
doi:10.1038/s41586-021-03847-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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