気候変動:気候変動の緩和を原因とする世代間の経済格差の定量化
Nature Communications
2021年10月6日
パリ協定の締約国を対象として、気候変動緩和の生涯経済費用と便益を世代別に試算した結果を示した論文が、Nature Communications に掲載される。今回のモデル化研究では、気候変動が緩和される結果として、1960年以前に生まれた人々は国内総生産(GDP)の減少を経験し、1990年以降に生まれた人々は恩恵を受けることが示唆されている。
気候変動緩和の費用と便益は、時間的にも場所的にも不均等に配分されていると理解されている。しかし、世代間の経済格差や高所得国・低所得国間の経済格差の可能性に関する情報は比較的少ない。
今回、Haozhe YangとSangwon Suhは、2020~2100年の169か国における気候変動緩和による経済便益の可能性についての世代間モデルと国家間モデルを作成した。その結果、ほぼ全ての国で、1960年以前に生まれた人々は、一生の間に1人当たりのGDPが正味で減少し、その影響は特に低所得国で顕著であることが明らかになった。一方、1990年以降に生まれた人々は、特に低・中所得国において、経済便益が正味で増加していた。また、高所得国の多くでは、全ての年齢コホートが正味で便益を得られない可能性があることも示された。著者たちは、年齢コホート間の費用-便益格差も年を追って拡大する可能性があり、低所得国の方が世代間の費用-便益格差が大きくなっている可能性があるという考えを示している。
以上の知見は、高齢者と若年層の間、高所得国と低所得国の間で気候政策の合意を形成するには、今後取り組むべき多くの課題が存在している可能性があることを示していると、著者たちは結論付けている。
doi:10.1038/s41467-021-25520-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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