気候:家畜肉の代わりに持続可能な方法で捕獲された野生動物肉を消費すれば、温室効果ガス排出量を大きく削減できる可能性がある
Scientific Reports
2021年10月8日
アマゾン川流域やアフリカ熱帯地域のコミュニティーでは野生動物肉が消費されており、その場合の温室効果ガス排出量が牛肉や鶏肉に置き換えた場合よりも少ないことを示した論文が、Scientific Reports に掲載される。ただし、これらのコミュニティーでの狩猟方法は、温室効果ガス排出の管理に潜在的利益をもたらすように慎重に管理されるべきだと著者たちは指摘している。
今回、André Valle Nunesたちは、1973~2019年に実施され、アマゾン川流域とアフリカの熱帯雨林地域の住民(合計約15万人)が参加した49件の研究をレビューした。Nunesたちは、それぞれの熱帯雨林地域での野生動物肉の年間消費量、野生動物肉を家畜肉に置き換えた場合の年間消費量、そして、その場合の二酸化炭素排出量の増加分を試算した。その結果、野生動物肉を消費するコミュニティーは、野生動物肉を牛肉に置き換えた場合と比較して年間71メートルトンの二酸化炭素に相当する排出量を節約でき、鶏肉に置き換えた場合と比較して年間3メートルトンの二酸化炭素に相当する排出量を節約できると考えられることが分かった。
また、Nunesたちは、野生動物肉の継続的な消費を支援することによって発生する可能性のある炭素クレジットの価値を試算した。炭素クレジットとは、温室効果ガスの排出を削減または回避して、自らの排出量を削減するプロジェクトに国家や企業が投資することによって生じる測定可能な温室効果ガスの排出削減量のことだ。Nunesたちは、アマゾン川流域とアフリカの熱帯雨林地域(49か所)の全てで家畜肉(牛肉や鶏肉)への転換をせずに野生動物肉の消費を続けた場合には、炭素クレジットの売却収入が、牛肉の場合は100万~300万ドル(約1億1000万~3億3000万円)、鶏肉の場合は7万7000~18万5000ドル(約847万~2035万円)に相当する可能性があると算定した。
Nunesたちは、持続可能な食肉用野生動物の狩猟と炭素クレジット制度の潜在的利益は、違法狩猟や病気の蔓延のリスクといった他の要因と比較検討されなければならないと主張している。Nunesたちによれば、乱獲は、生態系の破壊によって、節約される以上の二酸化炭素排出を生じる可能性があり、監視されるべきだという。Nunesたちは、炭素クレジット制度から生み出された資金は、熱帯林資源の保全を奨励し、狩猟者を教育して動物の健康状態を監視し、狩猟の持続可能性を確実なものとし、衛生的な野生動物肉の取引を確実に実施するために使用できるという考えを示している。
さらにNunesたちは、今回の研究の対象となった野生動物肉を消費するコミュニティーでは、住民の43%の年間タンパク質摂取量が、栄養失調にならないための最低限度を下回っていたことを強調している。食料安全保障と十分な栄養を確保するためには、野生鳥獣管理の改善が必要だと考えられる。
doi:10.1038/s41598-021-98282-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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