社会学:世界中の高齢者は向社会的行動が顕著だが、関心は国内に向けている
Nature Aging
2021年10月12日
世界中の高齢者は、他者に利益をもたらす行動(向社会的行動)、例えば、慈善的寄付や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)が発生している間のソーシャルディスタンシング(社会的な距離を保つこと)などに若齢成人よりも関与している可能性が高いことを報告する論文が、Nature Aging に掲載される。ただし、高齢者は、国内の慈善事業よりも国際的な慈善事業に寄付することが少なく、若い世代よりも集団内を好む傾向が強いことを示している。
今回、Jo Cutlerたちは、67か国の4万6576人(18~99歳)を対象とした事前登録制の全球的調査によるデータを分析した。この調査は、2020年4~5月に実施されたもので、対象者の年齢からCOVID-19のパンデミックの際に報告されたソーシャルディスタンシングの度合いを予測できるかどうか、そして、架空の慈善団体に寄付する意思を予測できるかどうかを調べることが目的だった。Cutlerたちは、いずれの向社会的行動も対象者の年齢から正しく予測できることを明らかにし、高齢者は、若齢成人よりもソーシャルディスタンシングと寄付のレベルが高いことを報告している。ただし、高齢者は、集団内を好む傾向を示し、国際的な慈善事業よりも国内の慈善事業に寄付することに積極的だった。
以上の知見は、世界的な危機の際に多くの異なる国や文化において、高齢者が自己申告によって示した積極的な支援行動が増えることの証拠となる。Cutlerたちは、今回の研究が、公衆衛生対策の順守を高めるとともに、高齢化する集団の社会的・経済的影響を予測する上で重要な意味を持つと結論付けている。
doi:10.1038/s43587-021-00118-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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