遺伝学:ウマの故郷を突き止める
Nature
2021年10月21日
現代の家畜ウマの起源は、今から4200年以上前の西ユーラシアのステップだったとする論文が、Nature に掲載される。この研究では、乗馬に使用する現生のウマにとって望ましい適応に関連する2つのゲノム領域候補が特定され、それらが選択されたことが、西ユーラシアのステップからのウマの普及に役立ったと考えられている。
ウマの家畜化は、長距離移動と戦争の様相を一変させたが、現代の家畜ウマの遺伝的起源と地理的起源は不明のままだ。現在のところ、紀元前3500年頃の中央アジアのボタイ入植地に関連する家畜ウマの系統に関する証拠が存在しているが、こうした古代のウマは現代の家畜ウマと近縁でないことが知られている。
今回、Ludovic Orlandoたちは、現代の家畜ウマの「故郷」を特定するために、イベリア、アナトリア、西ユーラシアと中央アジアのステップなど、馬の家畜化が可能であると以前から考えられていた地域から273頭の古代のウマの遺骸を収集した。そして、Orlandoたちは、これらの遺骸から単離されたDNAの解析を通じて、現在のロシアに位置する下部ボルガ-ドン地域にあった家畜化の拠点を特定し、そこから4200年前にウマが世界中に普及したことを明らかにした。また、Orlandoたちは、乗馬と関連性のある重要な運動適応と行動適応(持久力、荷重耐性、従順性、ストレスへのレジリエンスなど)を、2つの遺伝子(GSDMCとZFPM1)の正の選択と関連付けた。
Orlandoたちは、乗馬とスポーク車輪の戦車の使用が、新たに家畜化されたウマの普及を下支えし、家畜化によって生まれた新しいウマの品種によって最初の家畜化から約500年以内にユーラシア全域で全ての従来種が置き換わったという考えを示している。
doi:10.1038/s41586-021-04018-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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