環境:中国の温室効果ガス排出量削減に寄与する高速鉄道網
Nature Climate Change
2021年10月26日
中国では2008~2016年に高速鉄道網が拡大したことで、運輸部門の二酸化炭素排出量が著しく減少したことを報告する研究論文が、Nature Climate Change に掲載される。今回の研究から、この排出量削減の主たる原因は、高速鉄道網の拡充によって在来線の輸送能力に余裕が生じ、物品輸送が高速道路から在来線にシフトしたことであると示唆されている。
高速鉄道は、長距離公共輸送の重要な形態で、東アジアとヨーロッパで十分に確立されている。高速鉄道は道路や従来の鉄道よりもエネルギー効率が高く、環境に優しいと考えられているが、新しい鉄道路線が運輸部門の二酸化炭素排出量をどの程度削減できるのかは明らかになっていない。
今回、Yu Qinたちは、全国的な交通監視データと統計的手法を用いて、2008~2016年の中国の高速鉄道ネットワークの拡大が、それに対応した高速道路の旅客輸送と貨物輸送の両方の削減を通じて、年間1476万トンの二酸化炭素に相当する温室効果ガスの排出量削減につながったことを示す証拠を提示した。この代替効果は、高速鉄道による温室効果ガス排出量の削減に大きく寄与しており、削減量は、中国の運輸部門の温室効果ガス総排出量の1.75%に相当する。Qinたちは、この排出量削減の主たる原因が、高速鉄道を使用する旅客による間接的な効果として在来線の輸送能力に余裕が生まれ、貨物輸送が道路から在来線にシフトしたことだと考えており、今よりも環境に優しい電力条件が実現されれば、気候に対する高速鉄道の利益がさらに大きくなる可能性があると予測している。
同時掲載のNews & Viewsでは、Armin Schmutzlerが、Qinたちの論文が「高速鉄道システムの温室効果ガス削減効果を明らかにした初めての論文と考えられ」、「非常に有用な知見」が示されたと指摘している。
doi:10.1038/s41558-021-01190-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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