環境:G20諸国での物品の消費が数百万人の早期死亡の一因に
Nature Communications
2021年11月3日
モデル化研究により、2010年のG20諸国での物品の消費が原因となって、大気汚染による早期死亡者が約200万人に達した可能性が示唆されたことを報告する論文が、Nature Communications に掲載される。今回の研究で得られた知見は、全世界の死亡者数に対する国別の消費者の責任についての理解を深めるために役立つ。
G20は19か国とEUからなるグループで、これらの参加国だけで国際貿易の約4分の3を占めている。微小粒子状物質(PM2.5)の排出は、年間約400万人の早期死亡と関連しており、死亡の大部分は低・中所得国で発生している。大気汚染物質の排出は、他の国々(多くの場合が高所得国)で消費される物品の生産と関連することが多く、最近の研究で、越境汚染輸送(ある国で発生して別の国に影響を及ぼす汚染)と貿易関連の排出が健康に及ぼす影響を調べるようになった。しかし、PM 2.5排出の結果としての国別の物品消費の健康への影響、特に他の物質の排出の結果として大気中で形成される二次粒子の形成に関しては、まだ十分に解明されていない。
今回、国立環境研究所(茨城県つくば市)の南齋規介(なんさい・けいすけ)たちの研究グループは、PM 2.5の一次粒子と二次粒子による全世界の死亡者数に対するG20参加国(19か国)の国別の消費者の責任を定量化するためにモデリングによる研究を行った。南斎たちは、環境中のPM 2.5粒子をマッピングし、199か国におけるPM 2.5への曝露による健康への影響を推定し、G20諸国における物品の貿易と消費に関連付けた。南斎たちは、2010年のG20諸国での物品の消費の結果、1,983,000人(平均年齢67歳)が早期死亡したことを明らかにした。南斎たちは、これらの死亡例のうち78,600例が乳児だったという見解を示している。G20諸国のうち、PM 2.5による早期死亡者が最も多かったのは中国、インド、米国、ロシア、インドネシアで、これらの死亡例は、米国を除いて、大部分が国内での死亡だった。また、南斎たちは、G20諸国のうちの米国と他の10か国における物品の消費が、他の国々におけるPM 2.5に関連した早期死亡の50%以上を引き起こしたことを示している。
今回の知見は、各国が国外で大気汚染を引き起こす原因が直接越境輸送だけではないことを強調している。南斎たちは、G20諸国は物品の消費に関連した早期死亡者の数を減らすために共同行動をとるべきだと主張している。
doi:10.1038/s41467-021-26348-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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