生態学:鳥の群集が減って春が静かになってきている
Nature Communications
2021年11月3日
北米とヨーロッパの鳥のさえずりの音風景は、鳥の群集の減少傾向のために、より静かなものとなり、多様性も減ってきていることを報告する論文が、Nature Communications に掲載される。今回の知見は、人間の幸せな生活に影響を及ぼす可能性のある自然の音風景のさらなる劣化を防ぐために、保全の取り組みを充実させる必要があることを示唆している。
現在、世界人口の半数が都市部で暮らしており、自然の音風景は、人間の健康や幸せな生活に良い影響を与えることが知られている自然とのつながりを維持する上で重要な役割を果たしている。鳥のさえずりは、こうした音風景に大きく寄与しているが、人間の活動は、幅広い地域で鳥の個体数と種の豊富さの減少を引き起こしている。このような減少は、音響環境の貧困をもたらしたとも考えられるが、過去の録音が不足しているために過去と現在の鳥類の音風景の比較はうまく進んでいない。
今回、Simon Butlerたちの研究グループは、過去25年間の調査データと鳥のさえずりの録音を併用して、北米とヨーロッパの鳥の音風景を再構築した。Butlerたちは、ヨーロッパ22か国、カナダ、米国の20万以上の観測地点で実施された市民科学モニタリングプログラムによる鳥類種の年次記録とデータを照合し、それぞれの鳥類種と発声を対応させて、毎年の各観測地点の複合音風景を作成した。その結果、音風景の音響的複雑さの減少傾向が認められ、その原因は、鳥類種の豊富さと存在数の減少とされた。ほとんどの地域では、年を追って音風景が静かになり、多様性が減った。
自然の音風景の劣化は、人間の自然音体験を減らし、ひいては人間の幸せな生活に影響を与える可能性があり、Butlerたちは、保全の取り組みでは、この劣化を防止することに集中すべきだと考えている。
doi:10.1038/s41467-021-26488-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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