天体物理学:銀河系中心に宇宙線を通さないバリアが存在している可能性
Nature Communications
2021年11月10日
銀河系の中心部には、高エネルギー粒子を加速する機構と、周囲の宇宙線の海から中心分子雲帯への宇宙線の通過を阻止するバリアが存在する可能性があることを示す論文が、Nature Communications に掲載される。この知見は、宇宙線の起源について解明を進める上で役立つ可能性がある。
銀河宇宙線は、太陽系外で発生し、最終的に地球に到達する高エネルギー粒子のことであり、極端な天体物理環境における高エネルギー粒子を理解するための手掛かりとして重要な役割を果たしている。この銀河宇宙線の発生源については、天の川銀河の中心だとする学説が提唱されている。これまでの観測では、銀河系全体に比較的平坦に分布する銀河宇宙線の海の存在が明らかになっている。宇宙線は、超新星残骸や恒星風との相互作用の結果として天の川で加速され、そのために伝播するようになり、銀河系全体に広がっていった可能性があると考えられている。しかし、超高エネルギー宇宙線(TeV-PeV)の性質を理解するためには、天の川銀河の中心付近にある中心分子雲帯(CMZ)におけるさまざまな放射成分の探索研究をさらに続ける必要がある。
今回、Xiaoyuan Huangたちは、天の川銀河のCMZをフェルミ大面積望遠鏡で観測したデータを再解析し、GeV-TeV宇宙線の成分(以前に観測されたTeV-PeV宇宙線の低エネルギー成分)を特定した。Huangたちは、このことが、銀河系中心に高エネルギー粒子を加速する機構が存在していることの裏付けになるという考えを示している。また、CMZにおける宇宙線の推定エネルギー密度が宇宙線の海の成分よりも低いことが判明し、Huangたちは、このことが、宇宙線の海からCMZへの粒子の侵入を防ぐバリアの存在を実証しているという考えを示している。
Huangたちは、将来的な銀河中心の3Dモデル化が、宇宙線の発生源だけでなく、銀河系中心における宇宙線の輸送の理解に役立つと考えられると結論付けている。
doi:10.1038/s41467-021-26436-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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