ヨーロッパ人集団の遺伝的進化の証拠
Nature Human Behaviour
2021年11月16日
過去2000~3000年に、ヨーロッパ人の遺伝的進化に自然選択が果たしてきた役割について明らかにした論文が、Nature Human Behaviour に掲載される。今回の研究では、この期間に自然選択によって変化した755の形質と関連する遺伝的影響が特定されており、この過程がヒトゲノムに影響を及ぼし続けていることが示された。
自然選択は、進化が起こるルートの1つであり、1つの世代から次の世代へと小さな変化をもたらす。これまでの研究から、自然選択がホモ・サピエンスの進化をどのように形作ってきたかについては明らかにされているが、選択がその後のどのような影響をもたらしているかについてはあまり分かっていない。
今回、Weichen Songたちは、英国バイオバンクと精神医学ゲノミクスコンソーシアムから得た現生人類の遺伝学的データ、およびヨーロッパ中から集められた古代ヒトゲノムDNAを用いて、ホモ・サピエンスが種として出現してから現在に至る期間のヨーロッパ人集団における自然選択の証拠について調べた。Songたちは、755の複雑形質(複数の遺伝的影響と環境因子が関連する形質)に関連する遺伝的影響が、過去3000年の間に自然選択によって変化してきたと示唆している。これらの形質には、色素沈着や栄養摂取、炎症性腸疾患、神経性無食欲症といったいくつかのありふれた疾患など、多種多様な遺伝的影響に関連する形質が含まれている。
Songたちは、今回得られた結果では、こうした遺伝的影響が複雑形質に対して因果関係のある影響を及ぼすかどうかを判定することはできず、またヨーロッパ人のデータのみが使用されたことから一般化には限界があるものの、ヒトの遺伝と進化に関する今後の研究の基盤となる可能性があると結論付けている。
doi:10.1038/s41562-021-01231-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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