持続可能性:アフリカの「緑の長城」の恩恵の評価
Nature Sustainability
2021年11月16日
アフリカの「緑の長城」計画の一部として土地の回復に投資すると、1ドル投資するごとに平均して1.2ドルのリターンが得られることが、この計画に関する最近の費用便益分析から明らかになった。このことを報告する論文が、Nature Sustainability に掲載される。こうした知見は、この状況において劣化した土地を回復させることは、環境に良いだけでなく、経済的にも意味があることを明らかにしている。
2007年に開始されたアフリカの「緑の長城」計画は、サハラ以南のアフリカのサヘル地域における11か国にまたがる、1億ヘクタールの劣化した生態系の回復を目指す野心的な計画である。この計画は、高木などの植物を育てることだけでなく、土地の劣化によって生活や食料安全保障が脅かされている地域である、サハラ砂漠南部の国々にまたがるさらなる取り組みも含んでいる。
今回Alisher Mirzabaevたちは、アフリカの「緑の長城」計画の一部である土地の回復活動の費用と便益を評価した。Mirzabaevたちは、さまざまな仮定とシナリオの下で、国やバイオーム(気候や生息する生物群によって特徴付けられる広範な領域)によって違いはあるが、プロジェクトの収支が合うまでに最大で10年かかることを見いだしている。また、基本シナリオの下では、このプロジェクトに1ドル投資するごとに平均して1.2ドル得られることを見いだしている。基本シナリオでは、適応性のあるバイオームの回復が維持されており、プロジェクトのリターンの迅速な達成が優先されると仮定されている。提案されている土地の回復活動の全てに投資するには、基本シナリオの下では440億ドル(約4兆8400億円)[さまざまなシナリオ全体では180~700億ドル(約1兆9800億~7兆7000億円)]必要である。さらにMirzabaevたちは、暴力的衝突によって、提案されている回復地域へのアクセスが著しく低下し、面積が279万ヘクタールから141万ヘクタールに減ると見積もってもいる。
Mirzabaevたちは、今回の研究によって、土地の回復の費用対効果と生態学的な持続可能性がより高くなる可能性がある活動と場所に関する指針が得られ、今回の知見は、将来のプロジェクトの目標設定に役立つ可能性があると結論付けている。
doi:10.1038/s41893-021-00801-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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