公衆衛生:COVID-19パンデミックによって生じたメンタルヘルス上の懸念
Nature
2021年11月18日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)の第1波において、メンタルヘルスヘルプラインへの電話相談の件数が増加したことが観察され、その主な原因が、家庭内暴力、中毒、自殺念慮ではなく、ウイルスそのものへの恐怖と外出禁止令によって生じた孤独感だったことを示唆する論文が、Nature に掲載される。こうした知見は、世界中のヘルプラインへの約800万件の電話相談から得られたデータの分析に基づいており、これらのデータから公衆メンタルヘルス上の懸念を把握するための手掛かりが得られることを示している。
公衆のメンタルヘルスをモニタリングすることは、データの生成頻度が低くなることが多く、特に危機発生時にその傾向が著しいために、実施が難しい。ヘルプラインへの電話相談は、メンタルヘルス上の懸念をリアルタイムに反映する指標であり、対面での接触が感染リスクをもたらし、外出禁止令が発令されれば対面での接触ができなくなるパンデミックの際に特に重要だ。
今回、Marius Brülhartたちは、2019年から2021年初頭までのヨーロッパ14か国、米国、中国、香港、イスラエル、レバノンの合計23か所のヘルプラインへの約800万件の電話相談を調査し、ヘルプライン全体で平均すると、相談件数はパンデミックが最初に発生した時から6週間後にピークに達し、パンデミック前のレベルを35%上回ったことを明らかにした。この増加の主たる原因は、恐怖(感染への恐怖を含む)と孤独感で、パンデミックの後期には、身体的健康への懸念もあった。一方、人間関係の問題、経済的問題、暴力、自殺念慮はパンデミック以前よりも少なくなった。Brülhartたちは、パンデミックに直接関連する問題が、電話相談の背景にある不安を悪化させるのではなく、置き換わってしまったという考えを示している。このパターンは、COVID-19パンデミックの第1波と第2波以降に生じたことが判明した。自殺関連の電話相談は、COVID-19封じ込め対策が強化されたときに増加し、所得補助が延長されたときに減少したことも判明し、経済支援策が、ロックダウン措置によって生じる悩みの緩和に役立つ可能性が示唆された。
doi:10.1038/s41586-021-04099-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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