Research Press Release
がんが誘発するてんかんを抑える
Nature Medicine
2011年9月12日
シスチン/グルタミン酸輸送体を遮断すると、神経膠腫が誘発するてんかんを抑えられることがマウスで明らかになった。
神経膠腫と呼ばれる脳腫瘍の患者は、腫瘍細胞から興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸が分泌されるために、発作を起こすことが多い。神経膠腫はアミノ酸の一種シスチンを必要とし、腫瘍細胞上にシスチン/グルタミン酸輸送体があって細胞内へとシスチンを運び、同時に大量のグルタミン酸を周囲の脳組織へと分泌する。これが原因で腫瘍周辺のニューロンが過剰に興奮しやすくなり、発作が起こる。
H Sontheimerたちは、米食品医薬品局が認可しているスルファサラジンというシスチン/グルタミン酸輸送体阻害剤を、腫瘍をもつマウスに投与した。この薬は、現在は消化管に炎症のある患者の治療に使われているが、これが脳のグルタミン酸レベルの腫瘍による上昇を防ぎ、マウスの神経膠腫誘発性てんかんの発作を減少させることが明らかになった。この知見は、ヒトの脳腫瘍が誘発するてんかん発作を減少させる新しい治療法につながる可能性がある。
doi:10.1038/nm.2453
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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