気候変動:気候変動のモデル化を修正して将来的な二酸化炭素排出量を予測する
Nature Climate Change
2021年11月23日
2030年以前と以降の二酸化炭素排出量削減のための活動に依存する気候シナリオを予測するマルチモデル解析が行われ、最も楽観的なシナリオでも、地球温暖化を2℃に抑えるには不十分なことが示唆された。このことを報告する論文が、Nature Climate Change に掲載される。今回の前向きモデル化法は、あらかじめ決められた気候変動抑制目標に着目してその達成方法を解読するという、従来の「バックキャスト」法の概念とは対照的なものだ。
ほとんどの気候モデルは、「バックキャスティング」という概念に着目している。バックキャスティングでは、目標温度(例えば、地球温暖化を2℃未満に抑えるというパリ協定の目標)を定めて、その達成に必要な二酸化炭素排出量削減策が算出される。しかし、この方法では、常に現実世界の二酸化炭素排出量削減策を正確に反映できるとは限らない。なぜなら、二酸化炭素排出量削減策は国ごとに異なり、時期によって変化し、政策手段(カーボンプライシングの使用など)の選択によっても異なるからである。
今回、Ida Sognnaesたちは、7つの統合評価モデルを用いて、現在と2030年以降のさまざまな二酸化炭素排出量削減策が、世界のエネルギー起源の二酸化炭素排出量と気温の軌跡に及ぼす影響を検討した。2050年までの排出シナリオについては、さまざまなシナリオが予測されているが、ほとんどのシナリオで、2100年の地球温暖化の中央値が3℃未満(中央値の範囲は2.2~2.9℃)と予測されている。しかし、Sognnaesたちは、最も楽観的な排出量削減シナリオでも、地球温暖化を2℃に抑えるには不十分なことを明らかにした。また、二酸化炭素排出量削減策の想定よりも統合評価モデルの選択の方が、二酸化炭素排出量の予測に大きな影響を与えており、気温の軌跡を予測する際に統合評価モデルを相互に比較することが重要なことが強調されている。
Sognnaesたちは、パリ協定の目標を達成するためには、ロバストな気候政策に裏打ちされた新たな誓約によって、全球的な二酸化炭素排出量削減策を強化しなければならないと結論付けている。
doi:10.1038/s41558-021-01206-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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