環境:ヨーロッパの都市では高木によって暑い夏が涼しくなっている
Nature Communications
2021年11月24日
ヨーロッパの都市で高木のある地域は、高木のない都市の緑地よりも約2~4倍涼しいことを示唆する論文が、Nature Communications に掲載される。今回の知見によって、高木の茂った緑地と高木のない緑地の違いと、それらが地表温度の冷却に及ぼす影響を解明するためのさらなる知見がもたらされた。
これまでの研究では、都市の暑熱とそれに伴う健康影響が高木によってどのように緩和されるかが強調されてきた。高木は、主に木陰や蒸散によって都市の気温を下げる。しかし、高木が都市の暑熱に与える影響が、高木のない緑地とどのように異なっているかや、さまざまな気候においてどのように異なっているかという点の解明は進んでいない。
今回、Jonas Schwaabたちは、ヨーロッパの293都市の地表温度と土地被覆の人工衛星データに基づいて、高木のある都市部と高木のない都市緑地と市街地の気温差を調べた。加えて、Schwaabたちは、農村部の牧草地、農村部の森林と市街地(都市構造)の地表温度差も算出した。その結果、高木のある都市部は高木のない都市部の緑地より冷却効果が約2~4倍高いことが明らかになった。また、Schwaabたちは、連続的な都市構造と比較して、高木のある都市部では、観測された地表温度が、南ヨーロッパ地域で平均0~4ケルビン低く、中央ヨーロッパでは平均8~12ケルビン低いことを明らかにした。Schwaabたちは、都市部の高木と農村部の森林がヨーロッパ全域の都市部の気温を下げる潜在能力を有しているが、農村部の牧草地と高木のない都市部の緑地は、南ヨーロッパの一部地域で、都市部と比較して小規模な温暖化効果すら有している点も指摘している。
Schwaabたちは、今回の結果は、高木がヨーロッパの都市の暑熱を緩和する潜在能力を有していることを強調していると結論付けている。
doi:10.1038/s41467-021-26768-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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