持続可能性:SDGsパートナーシップは国家間の不平等を永続させる可能性がある
Scientific Reports
2021年11月26日
国連の持続可能な開発目標(SDGs)の実施を支援する組織間パートナーシップは、高所得国と低所得国の間の資源格差を永続させる可能性のあることが、新しい研究によって明らかになった。この知見を報告する論文が、Scientific Reports に掲載される。
SDGsは、社会と経済の発展と環境の持続可能性を促進する。官民組織が関与する国際的、国内的パートナーシップは、専門知識と資源の共有を促進することによって、SDGsの実施を支援できる。今回の研究までは、これらのパートナーシップにどの国が関与し、どの目標の実施を支援しているかが明らかになっていなかった。
今回、Malgorzata Blicharskaたちは、2019年7月の時点で国連の「SDGパートナーシップ・プラットフォーム」(パートナーシップとそれらが支援するSDGsに関する世界規模のデータベース)に登録された195か国の組織が関与する2876のパートナーシップに関するデータを分析し、SDGパートナーシップに関与している国の60%が高所得国または高中所得国、24%が低中所得国、16%が低所得国であることを明らかにした。平均すると、低所得国が18のパートナーシップに関係し、高所得国が34のパートナーシップに関係し、高中所得国と低中所得国が、それぞれ30のパートナーシップに関係していた。2か国以上の組織が関与するパートナーシップのうち、55%は低・中所得国の組織、10%は高所得国の組織のみ、35%は高・低・中所得国の組織が関与していた。
また、Blicharskaたちは、パートナーシップの焦点がパートナーシップに参加する国の所得と関連していることも明らかにした。貧困と飢餓を減らし、保健、福祉、ジェンダーの平等を改善することを目的としたSDGsに焦点を合わせたパートナーシップの占める割合は、パートナーシップに関与する国の所得が増加するにつれて減少した。その結果、低所得国は、これらの目標を実施する際に、高所得国の資源や専門知識の恩恵を受けられない可能性が生じている。
Blicharskaたちは、世界におけるSDGパートナーシップの分布が不均等であると、高所得国と低所得国の間に存在する資源格差が永続する可能性があり、SDGsを達成するためには、パートナーシップの確立と実施における不平等に取り組む必要があるという見解を示している。そして、Blicharskaたちは、持続可能な開発を世界中で促進するためには、資金助成機関が低所得国の組織を支援し、高所得国と低所得国の組織間のパートナーシップを奨励すべきだと勧告している。
doi:10.1038/s41598-021-01534-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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