気候変動:氷河が溶けるとタイヘイヨウサケの新しい生息地ができるかもしれない
Nature Communications
2021年12月8日
北米大陸の西部では、22世紀になると、氷河の融解によってタイヘイヨウサケ属の新たな生息地が出現する可能性のあることが、モデル化研究によって示唆された。この知見を報告する論文が、Nature Communications に掲載される。 回遊性のタイヘイヨウサケ属(Oncorhynchus)は、気候パターンの変化に応じて個体数が大きく変動した種群だが、北極域と亜北極域の河川の温暖化と氷河の後退が相まって、サケの新たな生息地が出現する可能性がある。これまでの研究では、新たに氷河が後退した河川にサケが定着したことが観察されているが、さまざまな地域における今後のサケの生息地の変動を予測するのは難題となっていた。 今回、Kara Pitmanたちは、さまざまな気候変動シナリオの下で氷河の後退をモデル化した。そして、Pitmanたちは、このモデルを用いて、北米大陸の西部の62万3000平方キロメートルの地域について、人工河川網を作成し、氷河の後退によって形成される新たな河川を定量化し、河川の勾配に基づいたサケの生息地モデルと結び付けた。その結果、Pitmanたちは、2100年までにタイヘイヨウサケ属が到達可能な新しい河川が約6000キロメートルに達し、そのうちの2000キロメートル近くが産卵と稚魚の飼育に適すると予測している。Pitmanたちは、氷河の後退は気候変動の結果の1つにすぎず、その他の気候に起因する影響(海洋熱波、海水準の上昇、極端な洪水現象など)のいずれもが、サケの個体数減少を広範囲で引き起こす可能性があると指摘している。 氷河の後退は、各種産業(例えば鉱業)に新たな展望をもたらし、そのことがサケの生息地の劣化を引き起こす可能性もある。Pitmanたちは、サケの生息地が出現する時期と場所を把握すれば、保全計画にとって有益な情報となり、将来のサケの生息地の劣化を回避する上で極めて重要だと結論付けている。
doi:10.1038/s41467-021-26897-2
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