人間行動学:運動行動を盛んにする最善の方法がメガスタディーによって判明した
Nature
2021年12月9日
米国のフィットネスチェーンの会員6万人以上を対象にしたメガスタディー(大規模な現場実験)が行われ、運動を勧める4週間のいくつかのデジタルプログラムによって、ジムの利用者数が9~27%増加したことが明らかになった。この知見について報告する論文が、今週、Nature に掲載される。今回の研究では、メガスタディーの実験デザインによって、54種類の行動介入が大規模な集団で厳密に検証され、その有効性が確認されたことが実証されている。
政策立案者は、国民の意思決定と結果を改善する方法についての手掛かりを得るために、行動科学への依存を強めている。行動介入を包括的に評価するためには、現場での検証を行う必要があり、他の行動介入と比較可能でなければならない。通常、行動介入の検証は、それぞれ異なる被験者群を対象として行われるが、このやり方では、同じような方法で結果を比較することが困難になる。こうした検証の結果が異なる場合、それが研究対象集団の違いによるものか、行動介入の有効性の違いによるものかを判断することは困難だ。
このような課題に取り組むため、Katherine Milkman、Angela Duckworthたちは、異なる介入を同じ集団で検証するメガスタディーの考え方を導入した。米国内の15大学の科学者(合計30人)が、それぞれ独立して活動するチームに分かれて、米国のフィットネスチェーンの会員6万1293人に、運動を勧める4週間のデジタルプログラム54種類を設計した。その結果、こうした行動介入(デジタル体験、テキストリマインダー、毎週の電子メール、報酬によるインセンティブなど)の45%によって、4週間のプログラム期間中に毎週ジムを利用する人が有意に(9~27%)増加した。最も効果的な介入法は、トレーニングを一度欠席した後でジムを再び利用した人に対して少額の現金報酬を提供するものであった。4週間の介入後に測定可能な行動変容を生み出した行動介入は、全体のわずか8%だった。
このメガスタディーモデルでは、独立した科学チームによってそれぞれ設計された数十種類の行動変容介入を比較できる。Milkmanたちは、このモデルが人間の行動に関する新たな知見の構築と検証を加速させ、公共政策にとって有益な知見を必ずもたらすことができると結論付けている。
doi:10.1038/s41586-021-04128-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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