健康:タバコをやめた後の体重増加に腸内微生物相が関係していた
Nature
2021年12月9日
タバコの煙への曝露がなくなった後に生じる腸内微生物相の変化が、過度の体重増加の背景にあるという考えを示唆するマウスの研究を報告する論文が、Nature に掲載される。今回の知見は、タバコをやめた人々の多くが体重の増加を経験することの原因究明を前進させる可能性があるが、この関連性が正しいことを確かめるためには、ヒトを対象としたさらなる研究が今後必要である。
喫煙は、世界中の人々の疾患と予防可能死の主たる原因になっている。ほとんどの喫煙者は、禁煙したい、あるいは最近禁煙を試みたと回答しているが、多くの場合、体重の増加(禁煙に伴う体重増加、SCWGと呼ばれる)が起こることが、長期にわたる禁煙の大きな障害になっている。これまでの研究では、現在と過去の喫煙が腸内微生物相の変化と関連していることが示唆されていたが、このような変化がSCWGにどのように関連するのかについては、ほとんど解明されていない。
今回、Eran Elinavたちは、3週間にわたってタバコの煙に曝露されたマウスの腸内微生物相を調べ、曝露されていないマウスと比較した。Elinavたちは、タバコの煙への曝露によって腸内微生物相が再構築され、煙への曝露がなくなった後に腸内微生物相がさらに変化して、正常に戻らなかったことを明らかにした。こうした組成の変化は、腸でのエネルギー回収を増強し、細菌代謝産物レベルを変化させ、カロリー摂取が制限された場合でも体重の増加をもたらした。抗生物質を使って腸内微生物相を枯渇させると、SCWGは起こらなかった。このことは、体重増加が微生物相に依存していたことを示しているが、さらなる実験では、このように観察された影響の原因が、タバコの非ニコチン成分であることが示唆されている。同じような腸内微生物相の組成と代謝物の変化は、少人数のヒトのグループでも観察されたが、この予備的な試験の結果は、より大規模な対照試験によって確認する必要がある。
doi:10.1038/s41586-021-04194-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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