加齢:ハダカデバネズミの加齢を測定する
Nature Aging
2021年12月24日
ハダカデバネズミ(Heterocephalus glaber)は、極めて長寿の齧歯類動物で、加齢しないように見える。しかし、分子レベルの加齢は確実に起こっており、それをエピジェネティック変化によって測定できることを報告する論文が、Nature Aging に掲載される。
ハダカデバネズミは、同じ体サイズの齧歯類動物の中で極めて長寿で、37年が最長寿命の記録になっており、加齢に関連した疾患にかかりにくい。これまでの研究では、ハダカデバネズミの加齢が、エピジェネティック変化(DNA自体の変化を伴わない遺伝子発現の変化)に関連しているとされてきた。しかし、こうした修飾による加齢を示すロバストなエピジェネティック「時計」は提示されていなかった。
今回、Steve Horvathたちの研究グループは、ハダカデバネズミ(0~26年齢)から採取した組織(11種類)の試料(約400点)を分析し、エピジェネティック変化の1つであるメチル化(自然に起こるDNAの化学修飾)を測定した。ヒトやその他の生物種において、DNAメチル化レベルと年齢が関連していることから、Horvathたちは、ハダカデバネズミに特異的なDNAメチル化の「時計」を上記の組織について作成し、メチル化レベルによって推定される年齢(メチル化年齢)が実年齢と非常によく相関することを明らかにした。Horvathたちは、雌の非繁殖個体のメチル化年齢と長寿の優位雌の繁殖個体(女王)のメチル化年齢を比較し、女王のメチル化年齢の加齢が非繁殖個体より遅いという観察結果を得た。
ハダカデバネズミの観察可能な特徴からは、ハダカデバネズミが「加齢しない」哺乳類であることが示唆されているが、他の哺乳類と同様にエピジェネティックに加齢しているとHorvathたちは結論付けている。また、Horvathたちは、エピジェネティック時計を利用すると、野生のハダカデバネズミの年齢を推定できる可能性があり、加齢、寿命、疾患抑制のためのモデル生物としてのハダカデバネズミの可能性を調べる研究にも役立つ可能性があると述べている。
doi:10.1038/s43587-021-00152-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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