気候変動:温暖化する世界では温暖化に適応した高山植物の頻度が低下するかもしれない
Nature Climate Change
2022年1月11日
今後の気候温暖化によって、高山植物(ミヤマナデシコや矮性サポナリアなど)のそれぞれの種において、温暖化した気候に適応した植物の数が減少すると考えられることが、モデル化研究によって明らかになった。この知見について報告する論文が、Nature Climate Change に掲載される。この不適応と考えられる現象は、これらの高山植物の地理的分布域が気候変動によって変化するにつれて、これらの植物が直面するリスクをさらに増大させる可能性がある。
気候温暖化に伴って気温が変化すると、在来植物種は、絶滅に直面したり、新しい条件に適応したり、気候の変化に追随したりすると考えられる。さまざまな生物の将来的な移動の必要性を予測する研究において、種は、その成長と生存に適した最適な温度範囲を持つ1つの単位として扱われるのが一般だ。しかし、この温度範囲に関しては、種内多様性がほとんど無視されている。
今回、Johannes Wesselyたちは、ヨーロッパアルプスの高山植物6種(ミヤマナデシコ、矮性サポナリア、long-nosed lousewortを含む)の気候耐性の種内多様性を考慮したモデルを作成し、21世紀の気候温暖化に対してどのように応答するのかを明らかにした。このモデルは、種内多様性に関係なく、それぞれの種の地理的分布域が減少することを予測しており、以前の研究とも一致している。ところが、ミヤマナデシコ(Dianthus alpinus)を除く5種については、より温暖な気候に遺伝的に適応している植物の頻度が気候温暖化とともに低下すると予測された。この直感に反した現象は、おそらく最先端定着効果と優先効果によって引き起こされるものと考えられる。別の言い方をすれば、1つの種の地理的分布域の最先端部ですでに見つかっている低温適応植物は、非定着地域にまで拡大する可能性があるが、気候の変化に伴って、温暖化に適応した植物の定着、ひいては生存を妨げる可能性もある。
今回の研究は、不適応の可能性を明らかにしただけでなく、局所適応と種内多様性を考慮しなければ、気候変動の影響の正確な予測が過小評価される可能性があることも明らかにした。
doi:10.1038/s41558-021-01255-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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