気候変動:降水量の変化が経済生産性に及ぼす影響
Nature
2022年1月13日
雨天日数が増えると、その地域の経済成長が鈍化する可能性のあることが、全球規模の研究によって示唆された。今回の研究では、人為的な気候変動が世界経済に悪影響を及ぼす可能性のあることが浮き彫りになった。この研究知見を記述した論文がNature に掲載される。
人為的な気候変動の結果として地球の水循環が変化することが予測されている。水の利用可能性は、農業の生産性、労働の成果と紛争に影響を及ぼし、鉄砲水は被害をもたらし、経済生産性が影響を受ける。しかし、降水量の変化は、モデル化が難しく、国別に評価されるため、気候変動によって生じる降雨の世界経済コストを見積もることが困難になっている。
今回、Leonie Wenzとその他2名の研究者は、77か国1544地域における過去40年間の日降水量データと各地域の経済生産性高を組み合わせて、降水量の変化が経済成長に及ぼす影響をモデル化した。その結果、雨天日数または日降水量が極端に多い日(1979~2019年のそれぞれの年に日降水量の分布の99.9パーセンタイルを超えた日数の合計)が増えると、経済成長が鈍化することが明らかになった。また、Wenzたちは、高所得国やサービス業と製造業の両部門が、日降水量の増加によって最も強く阻害されるという見解を示している。Wenzたちの分析では、過去の月間平均とは異なる干ばつが経済的損失につながる可能性も示された。
Wenzたちは、降水量の変化の経済的影響に関する我々のこれまでの理解が不完全であったことが、今回の知見に示されたと主張しており、今後の降水量の変化が経済成長に及ぼす影響を定量化するには、さらなる研究が必要だと結論付けている。
doi:10.1038/s41586-021-04283-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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