動物学:コウモリの反響定位の進化を内耳の構造から解明する
Nature
2022年1月27日
内耳の解剖学的構造に基づいて、論争のあるコウモリの進化的分類の正当性を裏付けた論文が、今週、Nature に掲載される。コウモリの内耳の構造は、種によって異なっており、この違いを理解すれば、コウモリの多様な反響定位戦略の進化を解明する手掛かりが得られる。
コウモリの系統学的分類(ゲノムデータの解析を組み込んだ進化的分類)からは、コウモリの反響定位が、Yinpterochiroptera亜目(主に視覚によってナビゲーションするマイクロバットとメガバットの一部が含まれる)とYangochiroptera亜目(反響定位を行う種であるマイクロバットが含まれる)で別々に進化したか、コウモリの祖先で一度進化し、後に一部のコウモリで失われたかであることが示唆されている。しかし、この系統学的分類は、これまで分子レベルの裏付けしかなされておらず、解剖学的な裏付けがないため、論争が起こっている。
今回、Zhe-Xi Luo、Benjamin Sulserたちは、精密解剖とCTスキャンを行って、19科に属するコウモリ39種の内耳の構造を調べた。その結果、Yangochiroptera亜目のコウモリのらせん神経節(聴覚系のニューロン群)の構造が高度に派生的なことが観察された。これは、Yangochiroptera亜目の現生種と祖先種に特有の構造だった。この解剖学的配置は、ニューロンの増加によるらせん神経節の大型化、ニューロンの神経支配密度の上昇、聴覚神経線維束の高密度クラスター形成を許容するものであり、Yinpterochiroptera亜目やコウモリ以外の哺乳動物の解剖学的構造とは異なっている。
Luoたちは、これらの特徴が、さまざまな反響定位戦略の進化的駆動力となったと考えられ、全ての反響定位を行うコウモリ種の82%を占めるYangochiroptera亜目の多様化と関連している可能性があると結論付けている。
doi:10.1038/s41586-021-04335-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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