がん:CAR T細胞療法によって10年間の寛解を維持できた白血病症例
Nature
2022年2月3日
がん細胞に対する免疫応答を誘導するように設計された遺伝子改変免疫細胞(CAR T細胞)の持続によって、10年間の寛解を維持できた2人の白血病患者について報告する論文が、今週、Nature に掲載される。これら2症例は、CAR T細胞応答の長期持続性を示しており、CAR T細胞療法の持続期間に関する知見をもたらしている。
CAR T細胞療法は、免疫療法の一種で、患者自身の免疫細胞(T細胞)を採取して使用し、患者の症状を治療する。患者から採取されたT細胞は、がん細胞を認識し攻撃するように改変され、それによって得られたCAR T細胞が再び患者に投与される。この治療法の長期効果については広範な研究が行われていない。
今回、J. Joseph Melenhorstたちは、2010年のCAR T細胞療法の第I相試験に登録された慢性リンパ性白血病患者2人の転帰について報告している。いずれの患者も2010年に完全寛解を達成し、その後10年以上の追跡調査期間中もCAR T細胞が検出可能な状態が継続した。Melenhorstたちは、いずれの患者の場合も、時間の経過とともにCAR T細胞が進化して、強く活性化した細胞集団が出現して優勢となったことを観察した。これらの細胞は、腫瘍細胞殺傷特性を示し続け、増殖を続けた。Melenhorstたちは、以上の知見は、白血病における抗がん応答と長期寛解に関連するCAR T細胞の特徴を理解する上で役立つと結論付けている。
doi:10.1038/s41586-021-04390-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
化学:アルゴリズムは、ウイスキーの最も強い香りと原産地を嗅ぎ分けることができるCommunications Chemistry
-
天文学:月の年齢はより古いNature
-
気候変動:南極の海氷減少が嵐の発生を促すNature
-
天文学:天の川銀河の超大質量ブラックホールの近くに連星系を発見Nature Communications
-
惑星科学:土星の環が若々しい外観を保っている理由Nature Geoscience
-
惑星科学:木星の衛星イオに浅いマグマの海はないNature