気候変動:極端な高温現象が深刻化するとミーアキャットの群れで結核を流行するリスクが高まる可能性がある
Nature Climate Change
2022年2月8日
極端な高温現象が深刻化すると、カラハリ砂漠に生息するミーアキャットの群れでは、個体の生理的ストレスが増すだけでなく、雄が群れの間を移動するようになるため、群れの中で結核が流行するリスクが高まる可能性があるという研究結果を報告する論文が、Nature Climate Change に掲載される。
気候変動によって、病気の伝播と病気の影響の両方が変化することがある。例えば、干ばつは病気の原因となる生物の拡散を促進し、熱ストレスは感染症に対する感受性を増大させる。ミーアキャットのように社会集団で生活する動物は、このような変化の影響を特に受けやすい可能性がある。しかし、気候変動が社会性動物の病気に及ぼす影響に関する研究は、ほとんど行われていない。
今回Maria Paniwたちはカラハリ・ミーアキャット・プロジェクトのメンバーと共同で、カラハリ砂漠に生息する2600頭以上のミーアキャット(Suricata suricatta)の22年間にわたる成長と生活史の詳しいデータを用いて、気候要因が結核の影響とどのように相互作用しているかを明らかにした。結核は、広範囲に蔓延する致死性の地域流行病で、生物種の集団の崩壊の主たる原因の1つになることもある。今回、モデル化手法により、気候要因と社会的要因によって決まる結核の臨床症例間の関連性が解明された。Paniwたちは、極端な高温現象が深刻化すると、生理的ストレスが増すだけでなく、結核の重要な保因者である雄の移動が活発になるため、結核が流行するリスクが高まることを明らかにした。
こうした結核の影響をミーアキャットの個体数の将来予測に組み込んだところ、12年後の集団絶滅のリスクが2倍以上になり、動物個体群動態に対する気候と病気の相互作用の影響を考慮することの重要性が明確に示された。
doi:10.1038/s41558-022-01284-x
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