気候科学:融解する氷河に含まれる氷はこれまで考えられていたよりも少ないかもしれない
Nature Geoscience
2022年2月8日
氷河の氷の厚さに関するコンピューター解析から、世界中の氷河が全て融解した場合の海水準上昇の全量は、これまでの推定よりも20%少ない可能性があることが示唆された。この知見を報告する論文が、Nature Geoscience に掲載される。
氷河の融解、氷床の縮小、海洋の熱膨張のために、海水準は上昇している。氷河の融解は現在の海水準上昇の約25~30%に寄与しているが、氷の厚さの観測が不足しているために、氷河の中にある水の全量はよく分かっていない。
今回、Romain Millanたちは、数千の人工衛星画像を用いて氷河の氷の動きの高分解能全球分布図を作製した。このデータに基づいて、Millanたちは氷の厚さを計算することが可能となり、世界中の氷河に蓄えられた氷の全量を見積もった。その結果、氷河は257ミリメートルの海水準上昇に寄与する可能性があることが明らかになった。これは、これまでの見積もりよりも20%少ない。これまでの評価との注目すべき違いは地域的にも見られ、ヒマラヤ山脈にはより多くの氷があるが、熱帯の南米アンデス山脈などの他の地域では氷の量は少なく、その地域の住民の水の利用可能性に影響を与える。
Millanたちは、氷河のモデル化には正確な氷河の形状と動態が重要であることを考えると、今回の結果が世界中の氷河の進化予測に影響を与える可能性があると結論付けている。
しかし、これらの解析の基礎となっている氷の厚さについては、現地でのさらなる観測が必要である。また、氷河の融解の影響は、熱膨張や氷床の縮小といった他の現象にも影響を受ける海水準上昇の全体的な予測と混同すべきではない。
doi:10.1038/s41561-021-00885-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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