化学:月や火星で酸素を得るために水を分解する
Nature Communications
2022年2月9日
月や火星で水を電気分解すると、地球で行う場合と比べて酸素の生成量が少なくなることを報告する論文が、Nature Communications に掲載される。今回の知見は、将来の宇宙旅行者たちが限られた資源をどのように使用するかを明らかにする上で役立つ可能性がある。
地球外の世界で人間の存在を確立するには、燃料と呼吸可能な空気が必要だ。その両方を得るために提案されている方法の1つが、電気を用いて水をその元素気体である水素と酸素に分解することで、水素は燃料に、酸素は呼吸するために使用できる。ただし、電気化学的水分解研究の大半は、地球の重力条件下で行われている。また、地球以外の天体の重力を探査する研究には、通常、超低重力状態しか再現できない高コストな飛行形での空中実験が必要となる。
今回、Beth Lomax、Mark Symesたちは、さまざまな重力が水の電気分解(水電解)に及ぼす影響を調べるために試験を実施した。著者たちは、放物線飛行中に電流量とガス気泡の形成を記録しつつ低重力条件下で電気化学的に水を分解した他、地球上のシステムを使用して高重力条件下で水を電気分解した。その結果、月や火星に近い重力条件下では、酸素生成量が地球で行うよりも最大11%少なくなることが判明した。また、高重力条件下でのデータを外挿して、低重力飛行データを推定できることも明らかになった。著者たちは、より低コストな高重力条件下実験のための装置を使って、低重力条件下での水電解をシミュレーションできたのは、今回が初めてだという考えを示している。
著者たちは、今回の実験によって、低重力条件下での電気化学現象に関する今後の研究は、高コストの飛行シミュレーションではなく、低コストの実験装置を使用することで、容易に進められるようになる可能性があることが示されたと示唆している。著者たちはまた、将来、月や火星に人間が定住する可能性を模索する際に、呼吸可能な空気を作り出すために必要なエネルギー量が増えることを考慮する必要が生じる可能性があると結論付けている。
doi:10.1038/s41467-022-28147-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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