健康:心疾患リスクの低下に関連するうつ病頻度の低下
Nature Cardiovascular Research
2022年2月15日
うつ病エピソードの頻度の低下が、ライフスタイルに関わるリスク因子や遺伝的感受性とは無関係に、冠動脈疾患リスクの34%低下と、2型糖尿病リスクの33%低下に関連することが明らかになった。このことを報告する論文が、Nature Cardiovascular Research に掲載される。
心疾患の患者に無認識のうつ病が多いことは、40年以上も前から知られている。しかし、うつ病が心疾患の発症に寄与するのか、それとも大半が臨床症状による二次的なものなのかは、まだ解明されていない。
今回、Pradeep Natarajanたちは、英国バイオバンクで得られたヨーロッパ系の32万8152人(年齢40~69歳)のゲノムを詳しく調べ、これらのデータから多遺伝子リスクスコア(心疾患のリスク予測の精密化に使用できる特殊なツール)を作成した。その結果、抑うつ気分が強くないことは、冠動脈疾患、2型糖尿病、心房細動のリスク低下(それぞれ34%、33%、20%)と関連があることが判明した。観察されたこの関連性は、メンタルヘルスが損なわれていることと心血管疾患の発症リスクの両方に関連することが知られている、食事、運動、喫煙といったライフスタイルに関わる因子とは無関係であることが分かった。また、このうつと冠動脈疾患との関連は、男性よりも女性の方が強かった。
今回の研究によって、うつが心血管疾患の発症に役割を果たしている可能性について、知見が深まった。ただし、Natarajanたちは、観察されたこの関連の要因となる機序を解明し、予防治療に役立つ手掛かりを見つけるには、さらに研究を進める必要があるだろうと結論付けている。
doi:10.1038/s44161-021-00011-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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