健康:「気分良く暮らしなさい」という社会的圧力が、幸福度の高い国の人々の幸福感を低下させている
Scientific Reports
2022年2月18日
世界幸福度の高い国で「幸せだと思いなさい」という社会的圧力を感じている国民が報告した幸福感が、世界幸福度の低い国の国民が報告した幸福感よりも低かったことを明らかにした論文が、Scientific Reports に掲載される。
今回、Egon Dejonckheereたちは、個人が受けた「悲しむのではなく幸せだと思いなさい」という社会的圧力から幸福感の感情的指標、認知的指標、臨床的指標がどのように予測され、この関係が、各国の幸福感の評点(世界幸福度)に応じてどのように変動するのかを調べた。調査対象となったのは、40か国の7443人で、精神的安寧、生活への満足度(認知的幸福感)、気分愁訴(臨床的幸福感)についての調査が行われ、肯定的に感じることに対する社会的期待をどう受け取っているかに関する自己申告を調査対象者に求めた。
その結果、調査サンプルに含まれる国々の大半で、「悲しむのではなく幸せだと思いなさい」という社会的圧力が感じられるという報告があり、この社会的圧力が、幸福感が低いという報告と有意に相関していたが、国によってばらつきが見られた。幸福感が低いことの具体的な内容としては、生活満足度の低下、肯定的感情の頻度と強度の低下、抑うつ・不安・ストレスの症状の増加などがあった。幸福感の指標の大部分において、「幸せだと思いなさい」という社会的圧力と幸福感の低さとの関係の強さは、世界幸福度の高い国の方が、低い国の約2倍になっていた。
今回の研究の対象国には、世界幸福度が上位の国々(オランダとカナダ)と下位の国々(ウガンダとセネガル)が含まれている。
この論文の筆頭著者であるEgon Dejonckheereは、「個人が達成しなければならないとプレッシャーを感じている幸福感のレベルは達成できない可能性があり、個人の生活の感情的側面と社会が認める感情との間に差があることが明らかになっている。こうした個人と社会の間の不一致は、自分が失敗者だという認識を生む可能性があり、これが否定的感情の引き金になることがある。全の国民が幸せそうに見える国では、期待値からの逸脱が目立ってしまう可能性が高く、そのために個人がもっと惨めな思いをする」と述べた。
Dejonckheereたちは、国の幸福度が高いからといって、全ての国民の幸福感が高いとは限らないと結論付けている。
doi:10.1038/s41598-021-04262-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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